デジタルアーカイブという言葉を耳にしたことはありますか?
紙やフィルム、写真といったアナログ資料をデジタル化して保存・活用するこの技術は、今や図書館や美術館にとどまらず、自治体、学校、企業などさまざまな現場で急速に導入が進んでいます。
特に近年は、VR・AR、AI、クラウドといった先進技術との融合により、単なる「保存のための手段」から、「価値創造のためのツール」へと変化しつつあります。
本記事では、**「デジタルアーカイブの活用事例」**に焦点をあて、文化・教育・ビジネスの各領域での実際の取り組みをわかりやすく解説していきます。
実在の事例とともに、デジタルアーカイブの可能性を深掘りしてみましょう。
デジタルアーカイブについて、詳しく知りたい方はこちらのブログ記事「【初心者向け】デジタルアーカイブとは?定義・意義・最新事例まとめ」もぜひご覧ください。

現場から見る活用事例 ~文化機関編
図書館・美術館・博物館が実現した、文化資産の“見える化”
日本全国の文化機関では、貴重な文化財や歴史資料を守るため、デジタルアーカイブの導入が急速に進んでいます。
背景には、資料の劣化防止、アクセス性向上、教育・研究・観光など多用途への展開といった目的があります。以下では、その中でも特に注目すべき実例を紹介します。
国立機関の先進事例:国立国会図書館・国立公文書館
■ 国立国会図書館「デジタルコレクション」
国立国会図書館(NDL)が運営する「国立国会図書館デジタルコレクション」では、2023年時点で310万点以上の資料が無料公開されています。
主な特徴は次の通りです:
- 明治期の書籍や古典籍、戦前期の雑誌などを高精細で閲覧可能
- 誰でもオンライン上で自由にアクセスできる
- 教育現場や研究者が一次資料として活用
特に2022年には著作権保護期間満了資料が大幅に追加され、**年間利用者数は約1,400万人(推定)**を超えました(※国立国会図書館年次報告書より)。
■ 国立公文書館「デジタルアーカイブ」
同じく国立の機関である国立公文書館では、政府文書や歴史的な法令関係資料をデジタル化し、一般公開可能なプラットフォームとして提供しています。
特徴的なのは以下の点です:
- 画像の高精細化(3,000dpiスキャンなど)
- 年代や資料種別、キーワードなど多角的な検索機能
- 学校教材との連携も視野に入れた構成
戦後の占領政策文書や、近代日本の条約文書など、通常では閲覧困難な資料もネット上で確認できる点は非常に大きな価値があります。
自治体による地域資源のアーカイブ活用
■ 栃木県「SHUGYOKU」プロジェクト
栃木県では、県内の美術館・博物館が所蔵する文化資産をデジタル化し、「SHUGYOKU(珠玉)」という統合サイトで公開しています。
この取り組みでは、以下のような点が注目されています:
- 8Kディスプレイ対応の高精細画像をオンライン展示
- 教育・観光分野との連携(例:修学旅行事前学習)
- 多言語化対応によるインバウンド向け対応強化
また、3D撮影やAR表示なども段階的に導入されており、「文化財×デジタル×体験」が実現されています。
■ 沖縄県南城市「なんじょうデジタルアーカイブ」
地域住民参加型のデジタルアーカイブとして注目されているのが、沖縄県南城市の事例です。
- 市民が持ち寄った写真・映像・思い出の品をデジタル化
- クリエイティブ・コモンズライセンス(CC-BY)で公開
- 学芸員によるストーリー付与と地域史の再構築
この事例は単なるデジタル保存ではなく、「市民参加によるアーカイブの創出」という新しいスタイルを提示しています。
最新技術と文化展示の融合:大阪市の挑戦
■ 大阪市「デジタル大阪ミュージアムズ」
大阪市では、所蔵品を一括で検索・閲覧できるポータル「デジタル大阪ミュージアムズ」を構築しました。
このプロジェクトでは以下のような新技術が活用されています:
- ARによる国宝展示の“拡張体験”(例:住吉大社宝物の3D閲覧)
- VR空間で古墳時代の倉庫を体感できるコンテンツ
- スマートフォンやタブレットからのマルチデバイス対応
来館しなくても、自宅から“文化財に触れる”という体験が実現されており、今後の博物館運営のモデルケースとされています。
デジタルアーカイブがもたらす新たな文化体験
ここまで見てきたように、文化機関でのデジタルアーカイブ活用は「保存のため」から「活用のため」へと進化しています。
とくにオンライン展示や市民参加型のプロジェクトは、従来の枠を超えて新しい文化体験の形を生み出していると言えるでしょう。
次章では、これら文化機関での取り組みに続き、教育現場や企業、自治体での“実務的な活用”事例を具体的にご紹介します。

日本には、まだ知られていない魅力が山ほどある。
では、なぜメディアに露出されていない場所が存在するのだろうか。
ここを考えると、デジタルアーカイブとしての意義も理解できるよ!
実務現場での活用事例 ~教育・企業・自治体など
業務現場で広がる、実用的・教育的なデジタルアーカイブ活用
デジタルアーカイブは文化資産の保存にとどまらず、教育現場や企業活動、自治体業務など、より実務的な領域でも導入が進んでいます。ここでは、教育支援・業務効率化・地域資料の整理といった切り口で、実際の活用事例を紹介していきます。
教育現場のアーカイブ活用:ADEAC × S×UKILAM
■ 教育支援型アーカイブ「ADEAC」
ADEAC(アデアック)は、凸版印刷が提供する教育・研究向けデジタルアーカイブプラットフォームで、全国の図書館・教育委員会・大学などで導入されています。
主な特長:
- 郷土資料、学校沿革、古文書などをカテゴリ別に整理
- 高精細画像+翻刻テキスト(活字化)+注釈付き表示
- 学校単位・自治体単位での教材利用に最適化
■ 小中学校での活用:「S×UKILAM」
同じくADEAC基盤上で展開される「S×UKILAM(スクラム)」では、教師が教材として使いやすい形で郷土資料を提供しています。
実際には、
- 古写真や地図を用いた地域探究学習
- 昔の教科書との比較で生活の変化を考察
- 探究型学習への展開(例:地域の歴史再発見プロジェクト)
など、子どもたちが“地域と自分を結びつける”探究型学習の核として活用されています。
企業における導入例:図面・資料・書籍の保存と業務効率化
■ 能登印刷のアーカイブ業務支援事例
石川県金沢市の老舗印刷会社「能登印刷」は、設計図・学術資料・写真・絵図などをデジタルアーカイブ化する受託業務を展開。以下のような5事例が紹介されています。
- 美術館の所蔵作品の写真を非接触スキャンで保存
- 大学図書館の貴重書(和装本)を高精細化
- 城跡調査で得た絵図や古地図を3Dビュー対応
- 建築業界での設計図スキャン+OCR+しおりPDF化
- 企業が保管するマニュアル類の全文検索用アーカイブ
これにより、業務効率の向上だけでなく、過去資料をナレッジ資産として再活用する動きが生まれています。
■ 雲紙舎(くもがみしゃ)のビジネスアーカイブ導入支援
もう一つの注目事例が「雲紙舎(scanspecial.jp)」による中小企業向けアーカイブ支援です。
同社が支援した例では、社内の紙資料(図面、契約書、販促資料など)をスキャンして、クラウドで共有。業務の属人化の解消や、BCP(事業継続計画)の一環としてのデジタル保存が実現されています。
自治体の実務活用事例:公共構造物・放送資料など
■ 塩事業センター:書籍の分解撮影と再製本
日本専売公社が前身の塩事業センターでは、明治時代からの記録書『大日本塩業全書』の完全デジタルアーカイブを実施。
特徴的なのは、一冊ごとに紙を解体 → 高精細スキャン → 再製本という工程で、原本も美しく保存される仕組みです。OCR化により検索も可能となり、業界研究や歴史資料としての価値も高まっています。
■ 国立競技場:三次元計測とVR保存
Toppanが手掛けた「国立競技場」のデジタルアーカイブでは、
- レーザー計測による3Dモデルの生成
- 高精細写真+BIM(建築情報モデリング)との統合
- 後世への継承、施設管理、構造補修設計に応用
といった大規模インフラに対する“記録・継承・活用”という包括的なアプローチが評価されています。
■ NHKアーカイブス:放送文化の継承
NHKは自社が保有する膨大な番組・映像資料を「NHKアーカイブス」として整理・公開しています。
- オンラインで約29,000本の映像を一般公開
- 放送台本、原稿、音声なども一体管理
- 教育現場や地域イベントでも活用
近年は、AIによる映像解析やタグ自動付与なども導入されており、「放送×アーカイブ×テクノロジー」の融合が進んでいます。
実務現場だからこそ実感される“効果”
こうした事例を通して見えてくるのは、「デジタルアーカイブは文化財だけでなく、業務や教育の現場でも“すぐに役立つツール”になっている」という事実です。
- 日常業務の中で過去資料を即座に検索できる
- 学びの現場で地域を深く理解する教材になる
- 社員の知識継承や災害対策にもつながる
導入にはスキャニングや運用設計など多少の手間は必要ですが、その後得られる恩恵は決して小さくありません。
続くセクションでは、これら多様な事例から見えてくる**「デジタルアーカイブの未来展望」**について、最新技術や社会変化の視点も交えながら考察していきます。

活用事例から見える未来展望
デジタルアーカイブは「保存」から「価値創造」の時代へ
これまでご紹介してきたように、デジタルアーカイブは文化機関だけでなく、教育・ビジネス・自治体といった多様な分野で導入され、単なる記録保管を超えた活用が進んでいます。
こうした現状を踏まえ、今後のデジタルアーカイブには次のような進化が期待されています。
VR・ARによる“体験型”アーカイブの拡大
近年、博物館や観光地を中心に、3DスキャンやARを活用したインタラクティブ展示が急増しています。
たとえば、国宝建築や遺跡をARでスマホ越しに再現したり、VRゴーグルを使って当時の空間を“体験”できるコンテンツが登場。
今後はこれが教育現場や地方自治体にも広がり、「触れるアーカイブ」=体験ベースの学びや観光体験が日常になると予想されます。
AI技術によるタグ付け・検索性向上
これまで手作業で行っていたメタデータ入力やキーワード付与も、今ではAIによる自動タグ付けや画像解析が主流になりつつあります。
Google Cloud VisionやAmazon Rekognitionのような画像認識AIを使えば、スキャンした写真の中の人物・場所・文字情報を自動抽出して分類可能に。
これにより、検索性の向上と分類作業の負担軽減が同時に実現できます。
多言語対応とユニバーサルアクセスへの対応
2020年代以降、観光・教育の多文化対応が重視されるなか、デジタルアーカイブでも多言語化が急務となっています。
- メニューや注釈、検索機能の多言語表示
- 自動翻訳ツールとの連携(例:DeepL APIやGoogle翻訳の埋め込み)
- 音声読み上げや弱視者向けのUIデザイン
こうしたユニバーサル対応は、国内外問わず誰もがアーカイブにアクセスできる環境構築に寄与します。
コミュニティ参加型アーカイブの増加
沖縄県南城市のように、市民が自らデータを投稿・解説する「参加型アーカイブ」の潮流も広がっています。
これからは、市民・企業・学校などの“多主体”でつくるアーカイブが増えていくと考えられます。
- 昔の写真に写っている人物や場所の情報を市民が補足
- 学生が地元史を調査して資料に加筆
- 地域のNPOが過去イベントの記録を整理・公開
このように、**「記録する」から「共に継承する」**という視点が、今後の主軸になっていくでしょう。

前のブログでも言ったよね?
デジタルアーカイブを単なる記録と捉えることの愚かさを。
官民一体となって、地域資源を盛り上げることは、これからのビジネスにとって
すごくポイントになるんだよね!
まとめ:デジタルアーカイブの活用は、すでに“始まっている”
ここまで、デジタルアーカイブの活用事例を文化機関・教育現場・企業・自治体といった多様な分野から紹介してきました。
どの事例も共通していたのは、「記録するための保存」ではなく、「活かすための活用」へと進化していることです。
- 教育では探究学習や郷土理解に役立ち
- 企業では業務効率化とナレッジ継承を促進し
- 自治体では地域文化の発信や市民参画の土台となっている
デジタルアーカイブは、まさに今この瞬間にも“未来を残す手段”として動き続けています。
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